←第4話へ
お風呂から出て一息つきながらふと考える。どうしていつも”姉”の私がからかわれるんだろう…。周りの友達には最初必ずと言っていいほど「妹」のほうだと勘違いされる。家の中での本当ワガママでやんちゃなりかを見たら、絶対私のほうが姉に見えるんだけどな…。
「そろそろ寝よー」
ぼーっと火照った体を冷ましながら姉の威厳が無いことを切なく考えていると、りかも遅れてお風呂から出てきた。
「あ、もうこんな時間かぁ。今日はどっちの部屋で寝る?」
「んーりんの部屋!」
私達はお互い別々の部屋があるけれど、いつも一緒に寝ている。学校も、放課後も、ご飯もお風呂も全部……全部一緒…。
正直周りから見れば気持ち悪いくらい一緒いいるかもしれない。けど、私はそれが嫌じゃない。りかといると毎日が楽しい。たまに喧嘩もするけど、いつもすぐ元に戻る。唯一私はりかに依存して負担かけてないか、それが心配だけど。優柔不断な私はここぞというときの選択をいつもりかに頼ってしまっているのは気になっていた。
そんなことを考えながらも、移動した先の部屋でまっていたふかふかのお布団が、私を簡単に夢の世界へと誘ってきた。
「おやすみ、りん」
「おやすみ、りか」
重くなった瞼を閉じながら、今日も平凡だけど楽しい一日が終わる。
――――――――
――――
そんな楽しい一日だったはずなのに、その日見た夢が、私を重苦しい心にさせた。
なぜなら、まさかの双子の妹のりかに首を強く絞められる夢だったからだ。
まるで現実かのようなリアルな夢におかされながら、青ざめて目が覚める。
汗ばんだ体が…また嫌な夢をまた思い出させるが、ふと首を横に傾けると、私の首や足にりかが絡まっていた。
なんだこの悪夢はりかが私に絡まってたせいか…。
「幸せそうに寝ちゃってさ…
こっちはりかのせいで悪夢だったっていうのに…」
そっとりんの体を動かし、ベッドから降りる。
汗と妙に記憶に残る夢を忘れるようと、朝からシャワーを浴びた。
――――――――
――――
さて、今日もりかを起こさなきゃ。
結局シャワーから出た後も、朝食の準備が終わった後も、りかはいつものことながら一向に現れなかった。しょうがないなと思いながら、私はまた自室に戻り、りかを起こす。
「ほら、りか起きて~!!もう時間だよ~」
「ん、まだ大丈夫、もうちょっと…」
昨日と全く同じやりとりがまた繰り広げられる。
「もぅ!昨日もそうだったじゃん。早くしないと置いてっちゃうよ!!」
「はいは~い」
…ループだ。結局置いていかないことを見透かしているかのように私を軽くあしらってくる。
…でも…
「………ねぇ、本当に置いてっちゃうよ?」
「もうそれ毎日いってるから聞き飽きた~」
「……。」
挑発してくる姿に少し腹が立ったのもあったが、今思えばほんのちょっと抵抗していつもと違う自分を見せたかったのかもしれない。いや、もしかしたらこの依存した関係を少し変えたかったのかもしれない…。
その日私は初めて”一人”で先に家を出て、学校に向かった。
少しの後ろめたさを感じながら…。