←第5話へ
「おはよーってあれ?」
教室に入るなりまこちゃんが私を見つけて声をかけてくれたが、首を傾けて不思議そうな顔をしている。
「…まこちゃんおはよう」
「あれ、今日りかは?風邪引いた?」
隣にりかが居ないことに違和感を覚えるのも無理はない。私達はそれくらいいつも一緒だからだ。
「あーどうだろう…ね。」
やや疑問が残ったままのようなのが、まこちゃんの下がり気味の眉から感じ取れる。でも、なにかを察してくれたのか、それ以上なにも言わない様子に優しさを感じる。
カバンを机の横にかけ、席に座って落ち着いてみる。すると、いつも以上に周りの話声が大きく聞こえてきた…。
(いつも、りんが居たから…)
登校中もそうだった。いつも同じ道、同じ通学路なはずなのに、妙に寂しく感じる。妙にざわつく心を必死で落ち着かせようとしていたとき、ホームルームが始まる5分前を知らせるチャイムが教室に響き渡った。
「ねぇねぇ、今日放課後あの雑貨屋さん行ってみる?」
心配なのが顔に出ていたのか、まこちゃんが私に声をかけてくれた。
「え…雑貨屋…ってあのアイス食べた近くにあった?」
「そう、りん気になってたでしょ。」
細かいところまでさり気なく覚えてくれている優しさや、行ってみたいと思っていた願望が叶いそうなことに胸の鼓動が上がる。
「うん!ありがとう。」
嬉しさで声の上がる私を見て、まこちゃんがギュッと私に抱きつく。
「も~りんは反応が素直で可愛いな~~」
ゼロ距離になり、まこちゃんのほのかに香る香水に包まれていた時、教室のドアが勢いよく開いた。
大きめの音に体がピクッと体が反応する。音の鳴る方へ視界を向けると…入ってきたのはりかだった。
「りっ……」
“りかおはよう!”
発しそうな口の動きが思わず止まった。りかの顔が怒りで満ちているのは明白で、蛇に睨まれた蛙のように体の動きが止まってしまった。
「お!遅いじゃん。体調大丈夫なの~?」
「体調…ぁあ、大丈夫。」
一瞬眉をひそめるような動作をしたように見えたが、すぐに笑顔になりまこちゃんと話している。
りかの機微が気になってしまうあたり、今朝の行動を反省したくなる衝動に駆られる。
「もうりかが来るのが遅いから、りんずっと不安そうにしてたよ~。」
「わっ!まこちゃん…!」
放って先に家を出たくせに、そんなことを知られたらまたからかわれるに決まっている。慌ててまこちゃんの口を封じようと手を動かしていたがかえってきた反応は思っていたものと違っていた。
「ふ~~ん、そ。」
妙にそっけない反応に妙に胸がざわついてしまう。そんな矢先にチャイムが鳴り、結局大した会話のないままお昼を迎えてしまった。
「………。」
「…なんかさ、今日天気悪いよねぇ~…」
お昼休みになっても全く会話のない私たちに、まこちゃんがなんとか話しを振ってくれる。このまままこちゃんに迷惑をかけるのも申し訳ないし、この重くて殺伐とした空気に自分でも耐えられない。必死で言葉を探してりかに声をかけようとした。
「崎本さん、ちょっといい?」
その時、声を発したの私でもりかでもまこちゃんでもない。私たちのクラスの委員長だった。
委員長がりんに声をかけた理由とは…?
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